建物の外壁やサッシの継ぎ目には、コーキング(シーリング)と呼ばれる建材が使われています。
継ぎ目に使われているコーキングには、建物の耐久性や防水性を保つという重要な役割がありますが、経年や紫外線の影響を受けて徐々に劣化が進行します。
そのため建物を維持するためには、定期的なメンテナンスが必要です。このページでは、、コーキング(シーリング)の種類や補修方法、劣化症状などについてご紹介しています。
コーキングとは
外壁塗装でのコーキングとは、建物の気密性や防水性を高めるために、外壁やサッシなどの継ぎ目をコーキング材で埋める作業ことを指します。
コーキングとシーリングの違い
コーキングとシーリングは、実際にはあまり区別されていないため、業者によって呼び方が違ったとしても、同じものだと思っていただいて問題ありません。
ただ日本工業規格では、JIS K6800:1985「接着剤・接着用語」で以下のように定義されています。
コーキング | 展色材(天然樹脂、合成樹脂、アルキド樹脂など)と鉱物質充てん剤(炭酸カルシウムなど)を混合して製造したペースト状のシーリング材。相対変位の小さな目地のシールに使用されると、JIS A 5751で規定されていましたが、2004年に廃止 |
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シーリング | 構造体の目地、間げき(隙)部分に充てん(填)して防水性、気密性などの機能を発揮させる材料。建築用は、JIS A 5758で規定されています。 |
また、専用の押し出し機で施工するものをコーキング、あらかじめ形が決まっているものをシーリングと呼ぶ場合もあります。
カートリッジと2液タイプがある
コーキング材には、主に「1液」と「2液」の2タイプがあります。
1液タイプは、カートリッジ式でそのまま使えるというのが大きな特徴です。空気中の水分や酸素などによって自然と硬化するため、手間がかからずDIYなどでもよく使われています。
2型タイプは、主剤と硬化剤を混ぜてから使用するコーキング材です。
硬化剤を混ぜた時に起こる化学反応によって硬化するため、硬化までの時間や硬化速度を調整することができるというのが特徴です。
ただ、硬化剤の配合比率や硬化速度のコントロールなどには専門的な知識と技術が必要となるため、業者向けの材料と言えるでしょう。
コーキングの役割
コーキングには、大きく分けて以下の2つの役割があります。
雨水や汚れの侵入を防ぐ
防水性の高いコーキングには、隙間から雨水が浸入するのを防ぐという役割があります。
雨水が建物I内部に浸入してしまうと、雨漏りや腐食の原因にも繋がります。そのため、外壁やサッシのなどの隙間をコーキングで埋めることで、雨水の浸入をブロックすることができます。
建材同士の緩衝材としての役割
コーキングには、建材同士の衝突や摩擦を防ぐ緩衝材としての役割もあります。
外壁に使われているサイディングやサッシは、気温変化などで伸縮したり、地震などの揺れによって、隣り合う建材同士が緩衝し合い、破損してしまうことがあります。
そのため、建材をわざと間隔をあけて取り付け、その隙間にコーキングが施されているのです。
コーキング材は、シリコン等の樹脂を素材としているため、ゴムのような弾力や伸縮性があるので、隙間に充填されたコーキング材が、建材が破損しないよう緩衝材として衝撃を吸収します。
コーキングの種類
コーキング材は、原料に配合さ入れている樹脂によって種類が分類されています。代表的な5つのコーキング材の特徴は以下の通りです。
ウレタン系
ウレタン系のコーキング材は、弾力性や密着性に優れているため、主にコンクリートのひび割れの補修などで使用されています。
ただ、汚れが付着しやすく、紫外線に弱いため耐候性があまり高くはありません。そのため、上から塗装して表面を保護する必要があります。
ポリウレタン系
ポリウレタン系のコーキング材は、耐久性や柔軟性、弾性に優れているため、様々な場面で使用されています。
塗料の付着性も高く、汚染しにくいので外壁塗装に最適なコーキング材と言えます。
アクリル系
アクリル系のコーキング材は、水性タイプで湿気に強く、非常に作業しやすいというのが特徴です。
価格も比較的安価ではありますが、耐久性が他のコーキング材に比べて低いため、リフォーム工事で使われることはあまりありません。
主に新築時や内装の目地などで使用されます。
シリコン系
シリコン系のコーキング材は、耐候性や耐水性に優れ、粘度が高いので下地材となるプライマーが必要ないというのが特徴です。
耐熱性にも優れているため、キッチンやお風呂などの水まわりで主に使用されています。
ただ、充填後にシリコンオイルが染み出てしまうので、コーキングの上から塗装をしても塗料が密着せずすぐに剥がれてしまいます。
専用のを使用すれば塗装可能なケースもありますが、基本的に外壁塗装で使用されることはあまりありません。
変成シリコン系
変成シリコン系のコーキング材は、ポリエーテル樹脂を原料としており、名前にシリコンと付いていますが、シリコン系のコーキング材とは全く異なる性質を持ったコーキング材です。
シリコン系のコーキング材と比べて、粘度が低いので下地材にプライマーを塗布する必要はありますが、硬化後は上から塗装することができます。
また、他のコーキング材と比べて価格は高めですが、耐候性や塗装性に優れていることから、外壁だけではなく様々な用途で使用することができるので、建築業界では最も多く使用されています。
コーキングの劣化症状
コーキングの劣化が進行すると、以下のような症状が見られるようになります。
シワ、ひび割れ
コーキングが紫外線などの影響を受けて劣化し、弾性が失われることで建物の揺れや温度変化による伸縮に追従することができずに亀裂が入ってしまうことがあります。
コーキングがひび割れてしまうと、その部分から雨水が浸入して、いずれは建物内部に染み込んだ雨水によって雨漏りなどの被害を引き起こしてしまう恐れがあるので注意が必要です。
また、そのままひび割れを放置してしまうと、亀裂がさらに深くなり真ん中から途切れてしまう「破断」という症状に繋がる可能性もあります。
痩せ
コーキングには、柔軟性を持たせるために「可塑剤(かそざい)」という成分含まれていますが、その成分が経年によって表面ににじみ出てしまうことで厚みが失われてしまうのです。
この症状は、「肉痩せ」とも呼ばれており、この状態を放置してしまうと、外壁とコーキングの間に隙間ができてしまいます。
隙間ができてしまうと、建物内部に雨水が浸入したり、コーキングが外壁材から剥がれてしまう可能性があるので注意が必要です。
ブリード現象
ブリード現象とは、経年などによって表面ににじみ出てしまった可塑剤によって起こる現象です。
ベタベタとした可塑剤が、塗料や外壁の汚れなどと反応することで黒いシミのような形で表面に現れてしまうのです。
撹拌不足やコーキング剤と塗料の相性が悪い場合にも起こる可能性があり、交通量の多い道路に面していたり、白やベージュなどの淡色の外壁で起こると特に悪目立ちしやすいので注意が必要です。
ブリード現象を防ぐためには、専用のプライマーを使用したり、ノンブリードタイプのコーキングを使用することをお勧めします。
コーキングの施工方法
コーキング工事では、「打ち替え」と「打ち増し」の2つの施工方法があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
打ち替えと打ち増し
打ち替えとは、既存のコーキングをすべて撤去してから、新しいコーキングを充填する方法で、古いコーキングの上から新しいコーキングを補充するのが打ち増しという方法です。
どちらの施工方法を採用するかは、劣化状態や施工箇所によって使い分ける必要がありますが、打ち替えの方が全てのコーキングを新しくするので、防水性や耐久性は高くなります。
先打ちと後打ちについて
先打ちと後打ちは、コーキング工事を塗装の前後どちらで行うかで異なり、塗装前にコーキングを施工する場合が「先打ち」、塗装後にコーキングの施工をする場合が「後打ち」となります。
先打ちの場合は、コーキングの上に塗装することでコーキングの表面を塗膜で保護することができるというメリットがあります。
ただ、コーキングと塗膜の柔軟性が異なるため、塗膜が建物の動きに追従できず、コーキングの上に塗装した塗膜がひび割れてしまう可能性があります。
また、コーキング材と塗料の相性にも注意が必要です。
後打ちの場合は、塗膜がひび割れる心配はありませんが、コーキングの表面を塗膜で保護することができないため、紫外線などの影響を受けやすくなるという点に注意が必要です。
コーキングの補修方法と施工単価
サイディングのコーキング
サイディングのコーキングを補修する場合には、足場が必要となるため外壁・屋根塗装と一緒に行うのが一般的です。
使用するコーキングの種類によっても異なりますが、コーキングの耐用年数は一般的に5年~10年程と言われています。
そのため、10年~15年が目安の塗り替えと一緒に施工する場合には、コーキングが劣化していること想定されますので、耐久性や防水性の高い打ち替えでの施工をおすすめします。
サイディングのコーキングを打ち替えで補修する場合の流れは以下の通りです。
1.カッターなどで既存のコーキングを全て撤去します。
2.周囲の外壁部分にコーキング材が付着しないようしっかりと養生します。
3.外壁材とコーキング材の密着性を高めるために、下塗り材のプライマーを塗布します。
4.新しいコーキング材をコーキングガンを使用して充填します。
5.ヘラを使って打ち込んだコーキング材をきれいにならします。
6.コーキングが乾く前に養生を撤去して完成です。
サッシのコーキング
サッシの場合は、既存のコーキングをカッターなどで撤去しようとした際に、 奥にある防水シートを傷つけてしまう恐れがあります。
そのため、サッシ廻りのコーキングの補修では、防水シートが傷つかないよう打ち増しで施工するのが一般的です。
サッシ廻りのコーキングを打ち増しで補修する場合の流れは以下の通りです。
1.外壁部分やサッシにコーキング材が付着しないようしっかりと周囲を養生します。
2.密着性を高めるために、下塗り材のプライマーを塗布します。
3.コーキングガンを使用して新しいコーキング材を充填します。
4.ヘラを使って打ち込んだコーキング材をきれいにならします。
5.コーキングが乾く前に養生を撤去して完成です。
施工単価
コーキングの施工単価は、打ち替えの場合は、700~1,200円/mで、打ち増しの場合は、500円~900円/m程が相場となります。
一般的な30坪の2階建て住宅の場合は、打ち替えで140,000円~240,000万円、打ち増しで100,000~180,000円程が工事費用の目安となります。
また、コーキング工事単体で施工を行う場合は、別途足場費用が必要です。
まとめ
コーキングには、雨水や汚れの侵入を防いだり、建材同士の緩衝材としての重要な役割があり、劣化が進行してしまうと雨漏りや建材の破損に繋がる恐れもあります。
そのため、建物の耐久性を維持するためにも、定期的に点検やメンテナンスを行うことが大切です。
施工方法には、打ち替えと打ち増しがあり、施工するタイミングによっても先打ちと後打ちの2つの方法があります。
それぞれにメリットやデメリットがあるので、どの方法で施工するかは建物の劣化状況などを考慮しながら判断しなければなりません。
株式会社佐藤では、塗装を熟知した塗装のプロと構造を知り尽くした建築構造のプロが現地調査を行い、立地環境、建築構造を考慮した上で最適な施工方法をご提案いたします。
もちろんご相談は無料ですので、どんなお悩みでもまずはお気軽にご相談ください!